ペルシャ絨毯
2500年以上の長い歴史を誇るペルシャ絨毯。現存する世界最古の絨毯は、パジリク絨毯とも呼ばれ、南シベリア・アルタイ地方のパジリクにあるスキタイ王家の古墳群から発掘された。紀元前400年代のものと推定され、当時のアケメネス王朝が贈呈したと考えられている。高度な染色・デザイン・色合わせ・織りの技術は、時代を超えて今日まで受け継がれてきた。ペルシャ絨毯に使用されるのは、国内産出の上質な天然素材。ペルシャ(イラン)の人々にとってペルシャ絨毯は、芸術性の高い装飾品であり、一家に代々伝わる財産である。
ペルシャ絨毯の主な産地
古くから装飾・実用を問わず、国内のどんな小さな村でも生産されてきた。世界的に有名な産地は約20あり、以下の5カ所は特に名高い。主要産地には、技術や知識を継承する専門サークルが存在する。
❶タブリーズ Tabriz
ヨーロッパとの交易の窓口であった歴史から、19世紀末にいち早く、輸出向けの絨毯を作り始めた。独自性の高い工匠たちが、20世紀半ば頃までに優れた作品を残している。バラエティに富んだデザインが多い。
❷クム Qum
クムでの絨毯製作は1930年半ばに始まった。他地域に比べ、歴史の浅い点を巧みに生かし、名産地の技術やデザインの中から最良のものを取り入れて再構成し、斬新なテイストを生み出している。
❸カシャーン Kashan
16世紀にはすでに絨毯生産の中心地のひとつであったカシャーン。19世紀末から20世紀半ばにかけて、多くの工匠が価値ある作品を制作し続けた。近年は、実用的な絨毯生産が中心となっている。
❹イスファハン Isfahan
かつて栄華を極めた美しい古都らしく、イスファハンの絨毯は、繊細で華麗な色調とデザイン、精緻な織りが特色。16~17世紀に完成したペルシャ絨毯の伝統を最もよく守り、現在もレベルの高い絨毯が作られている。
❺ナイン Nain
イスファハンから約150Kmの距離にあり、その影響を最も強く受けた。名匠アミン・ザデギが活躍した20世紀初頭には、極めて質の高い絨毯が製作された。現在は、落ち着いた色合いの実用的な絨毯の産地として有名。
ペルシャ絨毯の模様
ペルシャ絨毯のフォーマット
ペルシャ絨毯には、その名称だけで判・型がわかる、独特の名称が存在する。
- ポシティ(Poshti)-約80×60cm
- ザロチャラク(Zaarocharack)-約130×80cm
- ザロニム(Zaaronim)-約160×100cm
- ドサール(Do Zaar)-約210×140cm
- パルデ(Parden)-約250×160cm
- キャレギ(Kalegi)-約300~350×200~250cm
- ガリ(Ghali)-約300×200cmより大きいもの
- ケナレ(Kenareh)-約300~500×100cm
- ハラーク(Kharak)-約130×70cm
<注>サイズは産地によって多少の誤差が見られる。この他、円形(ゲルド Gerd)、楕円形(ベイジィ Beizi)、正方形(モラバ Moraba)などもある。