二層の被せガラスに酸化腐蝕彫で悠然と華開く香り高いジャーマンアイリスの花、茎、葉が浅く彫琢された大型花瓶。深みのある紫の色合いが静寂を感じさせる。アイリスはそのエレガントな花びらの様子からアール・ヌーヴォー時代を代表するモティーフのひとつ。ファイヤー・ポリッシュで花瓶の表面全体に艶感と柔らかな光沢をまとわせている。脚台部には《Nous monterons vers la Lumiere 》(我らは光の方へ上がって行くだろう)、フランスの高踏派の詩人テオドール・ド・バルヴィンの詩集の一編から引用された句が添えられている。ガレ円熟期の魅力を存分に堪能できる秀逸な作品。エルミタージュ美術館、デュッセルドルフ美術館、アワーズ県美術館に同じモデルが所蔵されている。
サイズ(㎝):高さ37.1 胴部最大径23.5
サイン:胴部下方に陰刻二重線で《Gallé》
制作年:1898年頃と推察される(文献:山根郁信編『決定版 エミール・ガレのガラス』河出書房新社刊、2019年)
技法:二層被せガラスにアシッド(酸化腐蝕彫)で花弁、茎、葉を浅く彫琢、ファイヤー・ポリッシュ